造影CTを撮りたい!
でも、腎機能が分かってからじゃないとだめと上級医に言われているし…。病院によっては放射線科から禁止されていることもあるかもしれません。
でも、実際のところそれってどうなんでしょ?
ほんとに腎機能を悪化させるんでしょうか?
結論から言うと、造影剤投与による急性腎障害なんてない!と思っています。なので、個人的には腎機能を気にして造影剤使用の有無を検討することは皆無です。
※ヨード造影剤血管内投与後に発症した腎機能低下のことをCont
少し根拠となりそうな論文を見てみましょう。
(Radiology. 2014;271:65-73.)
腎障害は造影剤自体が悪さをしているのではなく、もともとの腎機能に疾患の侵襲が加わったことによって出現しているだけではないかという報告です。
・もともとの腎機能で患者を4段階に分類、12508人に造影CT施行
◦eGFR≧90、60-89、30-59、≺30ml/min/1.73m2の4群
→もともと腎機能が低下していた患者群ほど急性腎障害が認められた
ここまではまあ、予想される結果です。しかし、Subgroup解析では驚くべき結果がでました(あくまでSubgroup解析なんですが…)。
・Subgroup解析…各腎機能ごとの比較では造影CT群と単純CT群では急性腎障害発症に関して有意差なし
◦eGFR≧90…OR 0.91(95%CI 0.38-2.15)
◦eGFR 60-89…OR 1.03(95%CI 0.66-1.60)
◦eGFR 30-59…OR 0.94(95%CI 0.76-1.18)
◦eGFR≺30…OR 0.97(95%CI 0.72-1.30)
造影剤の有無は急性腎障害に寄与しないと結論付けられました。
(Ann Emerg Med. 2018 Jan;71(1):44-53.e4.)
・造影CTでのAKIは増加するのか、についてのsystematic review。
・Meta-Analysis and systematic review…28個の観察研究、107000人がincluded!
・除外項目は以下
◦小児
◦PCIなどの血管造影
◦NACやbicarbonateなどによる予防的処置をしたもの
・primary outcome…急性腎障害
◦OR 0.94; 95%CI 0.83-1.07
・secondary outcome
◦透析率…OR 0.83; 95% CI 0.59-1.16
◦全死亡率…OR 1.0; 95% CI 0.76-1.36
10万人を超える患者が組み込まれた、非常に大きなsystematic review&meta-analysisです。publication biasが少ないのも特徴です。ただ、異質性は中等度あり、AKI発症があるか72時間以内にフォローされたのは18.5%であったというlimitationがあります。また、そもそもAKI発症が予後に関連するのかということに関しての臨床的意義は不明瞭です。
それでもやっぱり少なくとも造影剤による悪影響はあまりなさそうです。
(J Crit Care. 2019 Feb 4;51:111-116.)
・敗血症患者に対する造影剤使用でAKIリスクは上昇するか?
※敗血症患者における造影剤使用とAKIの関連について評価された最初のtrial
・Single-center retrospective propensity matched cohort analysis
◦inclusion
‣18歳以上
‣敗血症の診断基準を満たす
‣ER受診時点および48-72時間でのCre測定
◦exclusion
‣7日以内のER受診
‣Cre<0.4/ Cre>4.0
‣Creが取得されていない
‣血液透析
‣72時間以内のCT撮影
◦4171人のER受診
‣造影CT:1464人、単純CT:976人、CTなし:1731人
・primary outcome…AKI発症率
◦造影CT施行群:7.2%
◦単純CT施行群:9.4%
◦CTなし群:9.7%
→敗血症患者において造影CTはAKI発症と関連がない
‣OR 0.93; 95%CI 0.71-1.20
→CHFの既往歴があるとAKI発症率が高かった
‣OR 2.50; 95%CI 1.89-3.30
敗血症患者における造影剤使用とAKIの関連性について調べた初めてのtrialでした。
敗血症のときも造影CT撮ることありますが、やっぱり関連なさそうです。
上記のtrialから個人的には、
造影剤自体が腎機能に影響を与えているのではなく、もともとの腎機能に疾患の侵襲が加わって出現しているだけ
という考え方に賛成です。
よって、腎機能をみてから造影CTを行うという手間はあまりかけていません。
みなさんの施設ではいかがでしょうか?