りんごの街の救急医

青森県弘前市の救急科専門医による日々の学習のまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。

脳梗塞急性期治療に関するガイドライン 静注血栓溶解療法適正治療指針 第三版

急性期の脳梗塞が来たときに、tPAや血管内治療の適応がぱっと思いつかないようだと初動が遅れてしまいます。1時間対応が遅れる毎に神経学的予後が20%低下するなんて話も聞きます。そう、Time is brainなんです!

 

病棟で心房細動既往がある患者さんが左片麻痺を発症しました。

抗凝固薬を内服している患者さんのようです。あなたはどう動きますか?

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2019年3月に改訂されたものですが、up dateされていますよね?

 

治療薬

・静注用の血栓溶解薬にはアルテプラーゼを用いる
・我が国においては、アルテプラーゼの投与量として0.6mg/kgを静注する
・アルテプラーゼ以外のtPA製剤の投与は我が国において十分な科学的根拠がないので勧められない。
 

治療開始可能時間

・静注血栓溶解療法は、発症から4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害患者に対して行う
・発症後4.5時間以内であっても、治療開始が早いほどに良好な転帰が期待できる。このため、患者が来院した後、少しでも早く(遅くとも1時間以内に)静注血栓溶解療法を始めることが勧められる。
・発症時間が不明なときは、最終健常確認時刻をもって発症時刻とする。ただし、次項の場合にはこの限りではない。
・発症時間が不明なときでも、頭部MRI拡散強調画像の虚血性変化がFLAIR画像で明瞭でない場合には発症4.5時間以内の可能性が高い。このような症例に静注血栓溶解療法を行うことを考慮してもよい。
 
少し変更になったポイントがここです。
MRI diffusion-FLAIR mismatchがあれば4.5時間以内に発症した脳梗塞の可能性が高いと考えられています。
 
上記の根拠となったWAKE-UP trialについてまとめておきます。
 
(N Engl J Med. 2018 Aug 16;379(7):611-622.)
・Multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial
・欧州8か国での発症時間不明の脳卒中患者503人に対するRCT
 ◦アルテプラーゼ静注群 vs プラセボ
 ◦inclusion
  ‣MRI DWI高信号+FLAIRで高信号域なし脳梗塞
  ‣言語、運動、認知、追視、視野、半側空間無視のうち少なくとも1つの神経学的異常がある
  ‣18-80歳
 ◦exclusion
  ‣血栓回収を予定されいる
  ‣病前ADL…他者の介護を要する
  ‣severe…NIHSS>25
  ‣alteplaseへの過敏症
  ‣妊娠
  ‣出血性素因
  ‣脳出血既往
  ‣CTではnormalだがSAHを疑う場合
  ‣既知のCNS損傷(悪性腫瘍、動脈瘤、頭蓋内や脊椎手術など)
  ‣抗凝固薬使用
  ‣血小板≺10万
  ‣血糖値≺50、>400mg/dL
  ‣コントロール不良の高血圧(SBP>185/DPB>100mmHg)
  ‣肝不全、肝硬変、門脈圧亢進、急性肝炎
  ‣3か月以内の主要な手術や外傷
  ‣予後≦6か月
  ‣MRI禁忌
・(資金不足もあり)503人が対象となった
 ◦tPA群254人、placebo群249人
 ◦患者の多くがwake up stroke(89%)
 ◦tPAは平均3.1時間で投与された
primary outcome…90日mRS 0-1
 ◦tPA群…53.3% vs placebo群…41.8%
  ‣aOR 1.61, 95%CI 1.09-2.36
・secondary outcomeは以下
 ◦平均90日mRS…1 vs 2, aOR1.62, 95%CI 1.17-2.23
 ◦死亡…4.1% vs 1.2%, OR 3.38, 95%CI 0.92-12.52
 ◦頭蓋内出血…4.0% vs 0.4%, OR 10.46, 95%CI 1.32-82.77
 
WAKE-UP trialはwake up strokeに対するtPA投与を行なった初めてのMulticenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trialでした。ただし、資金不足のために途中で中止されており、本来であれば各群370人ほどのnが必要なtrialであったというlimitationがあります。
 
このtrialにより「発症時間不明脳梗塞の場合、MRI diffusion-FLAIR mismatchがあれば、tPA投与により90日後の神経学的予後を11%改善させる(ただし、頭蓋内出血や死亡を増やす可能性がある)」ことがわかり、本邦のガイドラインにも組み込まれたものと思います。
 

治療の適応

・静注血栓溶解療法の対象は、全ての臨床カテゴリーの虚血性脳血管障害患者である
発症後あるいは発見後4.5時間を超える場合、非外傷性頭蓋内疾患の既往がある場合、胸部大動脈解離が強く疑われる場合、CTやMRIで広汎な早期虚血性変化の存在などは静注血栓溶解療法の適応外項目である。一項目でも適応外に該当すれば本治療を行なわないように勧められる。
・慎重投与項目とは、投与を考慮してもよいが副作用その他が出現しやすく、かつ良好な転帰も必ずしも期待できない条件を指す
このような項目を有する症例では、治療担当医が治療を行なう利益が不利益よりもまさっていると判断し、患者ないし代諾者への十分な説明により同意を得た場合に限り治療実施が可能である。
・適応基準から逸脱した静注血栓溶解療法は症候性頭蓋内出血や死亡の危険性を高める

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この表が全てです!病院内のどこにあるか把握しておきましょう。

 

抗凝固療法中の患者への治療適応

・抗血栓薬投与中、とくに抗凝固療法中の患者には静注血栓溶解療法の適応を慎重に検討する
抗凝固薬投与中の患者が抗凝固マーカーの値や最終服用後経過時間によって適応外に該当すれば本治療を行なわないように勧められる。
ダビガトラン服用患者においては、抗凝固マーカーの値や最終服用後経過時間によって適応外とみなされた場合も、イダルシズマブを用いて後に静注血栓溶解療法を行うことを考慮してもよい。
 
もう少し詳しく紐解いてみると以下のように記載があります。
ワルファリン、ヘパリンINR>1.7、APTT1.5倍以上の場合には適応外
 ◦PCCやプロタミンによる補正を行ったとしても投与は推奨されない
DOACINR>1.7やAPTT>1.5倍では適応外
 ◦内服から4時間以内の場合には適応外
ダビガトランAPTT1.5倍以上(目安として約40秒)の場合には適応外
 ◦内服から4時間以内の場合には適応外
 ◦ただし、イダルシズマブを用いた後であればtPA考慮してよい
 ◦適応外としても、機械的血栓回収療法の適応があり、速やかにおこなえるのであれば、イダルシズマブやtPAを投与することなく施行を考慮してもよい
 
※抗血小板薬では禁忌事項はなし

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ダビガトラン内服中の場合には対応の仕方が異なりますので要注意です。
 

血管内治療

発症6時間以内かつ以下の場合には機械的血栓回収療法を開始することが強く勧められる
 ◦発症前のmRS0-1
 ◦内頚動脈または中大脳動脈M1部が閉塞
 ◦頭部CTまたは拡散強調画像でASPECT≧6点
 ◦NIHSS≧6
 ◦18歳以上
静注血栓溶解療法の適応症例では同治療を機械的血栓回収療法前に開始することが強く勧められる
・静注血栓溶解療法を施行した後にその効果を確認するためなどの理由で機械的血栓回収療法の開始を遅らせてはならない。
・ウロキナーゼを用いる発症後6時間以内の局所線溶療法は、中大脳動脈閉塞症の転帰を改善させうる。
 
 
しっかり頭に叩き込んでおいて、救える患者をしっかり救えるように構えておきましょう!
 
 
血管内治療についてはものすごく進歩があった分野なので、次回まとめます。