りんごの街の救急医

救急科専門医によるERで学んだことのまとめブログです!間違いなどありましたら是非ご指摘下さい。Twitterでも医療系のつぶやきをしています@MasayukiToc

心電図クイズ~AF既往のある患者のwide QRS tachycardia~

JAMA Intern Med. に心電図が載っていたのでみてみましょう!

 

wide WRS tachycardia…苦手です、怖いです。

 

2019 Feb 18. doi: 10.1001/jamainternmed.2018.8603. [Epub ahead of print]

Wide QRS Tachycardia in a Man With a Medical History of Atrial Fibrillation.

 

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症例

病歴

・70歳代男性、1カ月前から進行性の呼吸困難、下腿浮腫が出現
・CKD(stage 4)とAF既往あり
 ◦症状発現の6週間前にAFに対するablation治療を受けた
 ◦もともとflecainide 100mg1日2回投与を受けていたが最近になって100mg1日3回に増量された

身体所見と主要な検査結果

・血圧119/80mmHg、HR101bpm、SpO2 98%
・Cre2.1mg/dL(beseline 1.3), BUN45mg/dL, K4.7mmol/L, Lac4.6mmol/L, Tn0/06ng/mL, BNP1032pg/mL
・心臓超音波検査:LVEF15-20%に低下(6か月前は55-60%)
 
心電図は以下の通り(再掲載)

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ちなみにbaselineは以下のようだったみたいです。

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さて、考えられる原因はなんでしょうか?
 
 
 
心電図の特徴はどうでしょうか。
 
 
・irregular wide-QRS tachycardia(QRS220msec), 左軸偏位
 
wide QRS tachycardiaを見たら…VT!VT!VT!ですが…
・fusion or capture beatなし…VTの特徴なし、HR>150の頻脈でもないし。
 ◦そもそもregularではない
・異常Q波なし…心筋梗塞既往もなさそう
・QRSの立ち上がりが緩やか…これもVTの特徴と異なる

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(Emerg Med Pract. 2015 Jul;17(7):1-22; quiz 22-3.) ※参考画像
 
・baseline ECGで脚ブロックなし…変行伝導でもなさそう
 ◦RSR’ in lead V1やS wave in lead V1, R wave in lead V6の所見なし
・WPW with AFの可能性は?…baseline ECGから否定的
・beat-to-beat variationなし…もともとの心房細動が悪さをしているわけではなさそう
・高K血症なし
 
 
てなると怪しいのは薬歴でしょうか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 症例の答え

フレカイニド中毒
 
・入院後にフレカイニド血中濃度は1.47 μg/mL(normal range, 0.20-1.00 μg/mL)であったことが判明
 
以下の処置を行いつつ、CCU入室モニター管理となった。
・フレカイニド中止
・炭酸水素Na150mEq投与
 
2日後にはbaselineに復帰して退院となった。
3週間後のフォロー心臓超音波ではLVEFは47%まで改善した。
 
 
 
やっぱり「変な」心電図をみたらいつも考えるのは「DIE」です。
・D:Drug
・I:Ischemia
・E:Electrolytes
 
そして、ここでもやっぱり薬物中毒に炭酸水素Na(メイロン)なんですねぇ。
すごく流行ってる印象です。
 
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