今回は、主要な二次性頭痛のマネジメント編です!
高血圧緊急症に対する降圧療法
・原則は、MAPを1時間で25%低下させること
・脳梗塞急性期でtPA投与する患者は迅速に185/110mmHg以下に降圧する
・INTERACT-2 and ATACH-2 trialによると上記のような血圧管理が死亡率や機能予後を改善することはないよう
◦INTERACT-2 trialによればSBP<140mmHgを降圧目標にすることで機能的予後改善効果があったと報告
→これを受けてガイドラインでも、「SBP150-220mmHgのICHに対するSBP<140mmHgへの急激な降圧は安全である」という推奨がされるようになった(Class I, Level A recommendation)
降圧薬の選択
薬剤
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作用機序
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禁忌
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副作用
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Nicardipine
5-15mg/hr
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Dihydropyridine calcium-channel blocker
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AS
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頻脈
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Labetalol
20-40mg 10分毎
最大300mgまで
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α1+非選択性β-blocker
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喘息
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徐脈
気管支狭窄
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Esmolol
50γから開始
50γずつ増量して最大200γで投与
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心臓選択性β-blocker
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うっ血性心不全
ブロック(1度房室ブロック、洞不全症候群)
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徐脈
ブロック
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Nitroglycerin
10-200mcg/min
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静脈拡張薬
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右室梗塞
phosphodiesterase阻害薬使用
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頻脈 |
当院ではニカルジピンを使うことが多いです。
くも膜下出血
・診断がついた時点で、脳外科コンサルト+CTA準備を始めること
・適切な鎮痛薬、制吐剤投与
・頭部30度挙上…静脈ドレナージが改善する可能性あり
・降圧療法…SBP<160mmHgを目標にnicardipine or clevidipineで降圧
◦ASAで推奨
・Nimodipineは神経学的予後を改善させるため、動脈瘤性SAHでは投与しておくべき
◦4時間ごとに60mg経口投与
・予防的抗痙攣薬投与はcontroversial
◦抗痙攣薬投与により予後を悪化させるとの報告もあり
‣半数以上がPhenytoin投与されていた
◦最近はあまりtrial自体がない
◦Levetiracetamも投与され始めているがあまりデータなし
◦使うなら出血直後から3-7日間の限定使用にとどめておくこと
専門医の指示を仰ぎつつ合併症を起こさせないようにしていきます。
CVT
・血栓症の原因を治療することがfirst
◦感染症が疑われる場合には広域抗菌薬投与
→抗凝固薬による治療はcontroversial
◦この治療により最大1/3の患者で頭蓋内出血を呈する
※ただし、このデータは予後不良患者に対しての抗凝固療法を避けていた可能性あり、バイアスがあるかも
・ガイドライン推奨の治療は、抗凝固療法ではある
IIH
・腰椎穿刺は診断にも有用だが、治療として用いることもできる
◦ただし、効果は一過性
・肥満がある場合にはダイエット推奨
◦体重減少にはIIHの症状と徴候を減弱させる効果がある
・Acetazolamide…first line therapy
◦250-500mg1日2回経口投与
◦脳脈絡叢での脳脊髄液産生を低下させる
◦低Na減量食+Acetazolamideにより視野異常が改善する(multicenter double-blinded RCT)
◦副作用…紅潮、SJS/TEN、無顆粒球症など
・Acetazolamide治療が失敗するか禁忌の場合…topiramate 25mg po or furosemide 20mg po
◦適切な使用量は確立されていない
・難治性の場合には外科的対応もある
PRES
・原因となる薬物(化学療法、免疫抑制療法など)がある場合には被疑薬の中止
・降圧療法が治療の主軸
◦どの降圧薬を選択するかは治療する医師により異なる
‣年齢、血圧、脈拍数などを考えて使用
◦Nitroglycerinは頭蓋内圧亢進を疑う場合には禁忌
・1時間以内にMAPを25%低下させることが目標
CAD
・外傷性でも非外傷性でも脳卒中予防のための管理が必要になる
・CADISP studyによると、抗血小板薬と抗凝固薬との比較では死亡率や神経学的予後に有意差なし
・EMPの著者らの推奨は以下
◦頭蓋外動脈解離を伴う場合…ヘパリン化の後、warfarin/DOAC
◦頭蓋内動脈解離を伴う場合/抗凝固薬禁忌の場合…抗血小板薬(aspirin or clopidogrel)
急性隅角閉塞緑内障
・通常片側性で発症し、高齢者/遠視患者が一般的
・頭痛/眼痛、嘔気/嘔吐、結膜充血、霧視、羞明感、seeing halos around lightsなど
・眼圧上昇が疼痛の原因であり、迅速な眼圧低下が治療となる
Timolol(β-blocker)
0.5%点眼液
※チモプトール点眼液
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1滴投与(必要ならば1時間あけてもう1滴)
12時間ごとに投与
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Pilocarpinne(miotic)
1%または2%点眼液
※サンピロ点眼液
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1滴投与
30分あけて最大3回まで投与可
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Apraclomodone(α-2 aganist)
0.5%点眼液
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診断時に1-2滴投与
1時間後に1滴投与
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※当院採用薬
GCA
・疑いが強い場合には、CRPやESR陰性でも治療開始すること
◦ステロイド15mg/kg/dayを1-3日間点滴静注
◦引き続き、40mg/dayを経口投与
子癇前症
・妊婦、褥婦の高血圧では子癇前症を考慮
◦産後4週間までは考慮
・妊娠20週以降+高血圧+蛋白尿またはそのほかの重篤な症状と定義
◦蛋白尿は、そのほかに重篤な症状があれば診断に必須ではない
◦重症子癇前症…子癇前症に肝機能障害or腎機能障害or肺水腫or新規発症の頭痛
・治療は硫酸マグネシウムと降圧
◦硫酸マグネシウム…4-6gを15-20分かけて点滴静注、さらに1-2g追加投与
◦降圧… labetalol 10-20mg IV, hydralazine 5mg IV, nifedipine 10-20mg orally
※硫酸Mg20mEq/20mlには2.46gのMgSが含まれる。
●高血圧
・SBP≧140 ± DBP≧90mmHg
(4時間あけて2回投与)
or
・SBP≧160mmHg ± DBP≧110mmHg
(1回測定でよい)
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上記に加えて、以下の1つ以上を満たす
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●蛋白尿
・24時間尿でタンパク≧300mg
・タンパク/Cre ≧ 0.3mg/dL
・dipstickでタンパク1+
●汎血球減少
・血小板≺100000/ml
●肝機能異常
・liver transaminaseが2倍以上に上昇
●腎機能異常
・Cre>1.1mg/dL
・腎疾患がない場合にはbaselineの2倍以上に上昇
●肺水腫
●新規発症の頭痛
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過去にもガイドラインを紹介してますのでご参照ください。
RCVS
・血管収縮は通常数週間かけて改善する(3か月以内)
◦基本的には90%以上の患者で自然に改善するため特別な治療は要さない
・強い痛みに対してはオピオイド推奨
◦トリプタンなどは血管収縮作用があるため禁忌
ピットフォール
特に、初学者が陥りやすいピットフォールを掲載します。
まとめとしてどうぞ!
・「頭痛の患者でCTは陰性、腰椎穿刺でxanthochromiaないし、SAHは除外して帰宅にしました」
◦xanthochromia出現は発症から2-12時間かかる
◦診断がつかなければCTA/MRAをせよ
◦低リスク患者になら使用可能
◦妊婦は高リスクのため使えない!MRVをすること!
・「頭痛と頸部痛を訴えているが神経学的異常がないため椎骨脳底動脈は考えづらいと思います」
◦CAD初期には神経学的異常はでない
◦治療目的は解離からの血栓形成によるstroke予防なので、解離の段階で診断したい
・「新規発症の頭痛を主訴に受診した55歳男性、特に神経学的異常がないため画像検査は不要と考えます」
◦ACEP推奨では、50歳以上の新規発症頭痛には画像検査が検討されるべきとされている(Level C recommendation)
・「産後7日の褥婦の頭痛。血圧高値でしたが尿蛋白陰性だったので子癇前症は否定的です」
◦蛋白尿は必須項目ではない
◦頭痛と高血圧あればアウト!降圧薬とマグネシウム投与を始める。
◦赤沈とCRPだけではスクリーニング検査として不十分
◦可能性が高い場合にはGCAとして治療せよ
・「PRESと診断された患者、タクロリムスが原因と考えるが血圧コントロールができたため薬剤は中止せず継続」
◦PRESの原因として薬剤を考える場合には薬剤の中止が大前提
・「頭痛と霧視がある27歳女性。視力は正常のためIIHは除外できます」
◦霧視は乳頭浮腫による症状で、視力はおかされないことが多い
‣ベッドサイドで視神経鞘を評価する
◦視野が影響を受ける
・「HIV既往がある新規発症の頭痛患者。軽度だし、神経学的異常ないし対症療法で帰宅させました」
◦新規発症の頭痛があるHIV患者では画像検査が推奨(Level B recommendation)
救急外来で除外すべき頭痛の原因についての疫学や鑑別の仕方、検査などについては以下を見てください!